訪問看護ステーションを開業したい!必要なものと注意すべきことは?
高齢者の人口が増加傾向にある今、訪問看護の必要性は高まっています。 そのようななか、どこかの訪問看護事業所に所属するのではなく、自身で訪問看護ステーションを開業したいと考えるケースもあるのではないでしょうか。 この記事では、訪問看護ステーションを開業するために必要なものや手順を注意点も含めて解説します。
目次
訪問看護ステーション開業の要件は?
訪問看護ステーションを開業するためには、さまざまな要件が必要になります。
たとえば、どこに申請すればよいのか、申請する際に満たしておかなくてはならない有資格者の人員や設備、運営などです。 ここでは、それらの基準について詳しく解説します。
1.訪問看護ステーションの開設要件は?
訪問看護ステーションを開設する際は、法人格をもっていなくてはなりません。 そのため、個人で開業しようと考えているなら、まず、法人を作る必要があります。
そして、次の段階が、開業しようとしている都道府県知事の指定を受けることです。 ただし、開業する地域が指定都市や中核都市では、市長の指定を受けることになります。
なお、開業する際は、どのような資格をもつ人が何人在籍していなくてはならないか、 また、そのうち常駐の人数が何人必要かなど基準を満たしていなくてはなりません。
加えて、看護を提供する場所が訪問先であっても、スタッフが集まる場所や事務所、訪問看護のための設備、 備品などの設備基準を満たしておくことも必要です。 さらに、訪問看護ステーションとして機能する運営基準も満たしていることが条件になります。
2.訪問看護ステーション開業の人員基準は?
訪問看護ステーションを開業するためには、さまざまな人材が必要です。
そのなかで、看護師や准看護師、保健師などの看護職員は、必ず置いておかなくてはならない人員の数が決められています。 一方、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の数は、訪問看護ステーションの実情に合う人数でよいとされているのが特徴です。
また、病院や診療所の訪問看護ステーションとそれ以外の訪問看護ステーションでは、 必要とされる看護職員の数が異なります。
病院や診療所以外の訪問看護ステーションで必要とされる看護職員の人員の数は、常勤換算で2.5人以上です。 加えて、管理者となれるのは常勤の看護師か保健師になります。
それに対し、病院や診療所の訪問看護ステーションでは相当数で良いとされ、人員数の基準はありません。 ただし、最低でも1人は常勤である必要があります。
3.訪問看護ステーション開業の設備基準は?
病院や診療所以外の訪問看護ステーションを開業する場合の設備基準として、 まず、訪問看護ステーションを運営するに足る専用の事務室が必要です。
しかし、同一敷地内に関連する事業所や施設がある場合は、 その事業所の事務所とは別に運営に必要な広さの専用の区画を確保できれば良いとされています。
また、医療機関の訪問看護ステーションでも、病院の事務所とは別に必要な広さの区画を設けなくてはなりません。
なお、具体的な事務所の面積は定められていませんが、 指定訪問看護の提供をするために揃えなくてはならない設備や備品が配置できる面積は必要です。
最低限必要となる設備や備品は、聴診器や血圧計などの医療機器、スタッフ用の机、ロッカーなどになります。 また、数年分の保管義務のあるカルテや書類などは時間や利用者数とともに増えていくため、 保管する棚とそれらを配置するスペースの確保も重要です。
4.訪問看護ステーション開業の運営基準は?
訪問看護ステーションを開業する際は、さまざまな運営基準を設けることも必要になります。
その一つが、内容と手続きに関する説明と同意についての基準です。
訪問看護を提供するときは、まず、利用者やその家族に対して、 運営規定や重要事項説明書について説明をしたうえで同意を得なくてはなりません。
そして、介護保険と医療保険のどちらの対象になるのか、 被保険者証で受給資格を確認してサービスを提供する必要もあります。
また、訪問看護実施時は、主治医の指示に基づいて提供されるため、主治医との連携を密にするとともに、 主治医への訪問看護計画書と訪問看護報告書の提出も必須です。
その訪問看護計画書には、利用者の心身の状況や主治医からの指示などをもとに、 看護目標や具体的サービス内容を記載します。
そのほか、他の保険医療や福祉サービス、自治体などとも連携し、療養生活の向上やより良い環境づくりに努めることも必要です。
訪問看護ステーション開業の手順は?
訪問看護ステーションを開業するには、会社の設立や自治体への申請、開業資金の調達、事業計画の提出など、 いくつもの段階を踏まなくてはなりません。
この段落では、訪問看護ステーション開業の手順と各段階での注意点について解説します。
1.開設する目的や方針を決定し明文化する
訪問看護ステーションを開設する際は、最初に開設の目的や方針を明確にしておく必要があります。 その内容は、地域に根差した訪問看護を行うために、地域の特性が反映されたものであることが重要です。
そのために、まず地域にある既設の訪問看護ステーションの数や規模、病院や診療所などの医療機関の数、 福祉サービスの供給量などを調べ、新設の事業所のニーズを把握します。
そして、次に行うことが、開設した際に見込める利用者の数やどのような訪問看護を提供すべきか、 連携先の医療機関はどこにするかなどを検討することです。
その後、これらのさまざまな情報から、訪問看護ステーション開設後に提供するサービス内容の検討と方向性を決め、 開設の目的や方針を明文化します。
2.会社を設立する
訪問看護ステーションを開業するためには、法人格を得なくてはなりません。
また、法人にはいくつかの形態がありますが、株式会社、合同会社、NPO法人などのいずれでも良いとされています。
ただし、有限会社は、2006年の会社法により廃止され、以降の新設はできなくなりました。 そして、同年の会社法によって新たに設けられた法人形態が合同会社です。
それぞれの法人形態は、設立方法や責任の範囲、設立にかかる期間、費用などが異なるため、どの形態で設立するかは、よく検討したほうが良いでしょう。
また、すでに法人格をもち、法人の組織や活動などを定めた定款に関連する記載がない場合は、 定款や寄付行為の変更手続きを行わなくてはなりません。
具体的には、事業目的に訪問看護事業を行う旨の記載をして変更登記をすることになります。
3.自治体との間で開業の事前協議をする
訪問看護ステーションを開設する際は、自治体での事前協議が必要です。
そのため、まずは、訪問看護事業所を開設する市町村の介護保険担当者や老人医療担当者との面談を申し込みます。
そして、面談では、訪問看護ステーションを開設する意向があることや開設場所、 問看護事業の目的、開業の理念や運営方法などの説明をしなくてはなりません。
そのため、あらかじめ資料をまとめおくことが重要です。
なお、この事前協議では、開業の申請手続きに必要な情報を得ることも目的の一つになります。
また、指定都市や中核都市以外の地域で開設する場合は、都道府県知事の指定を受けなくてはならないため、 都道府県の担当者とも事前に面談しておく必要があります。
4.開業資金を調達する
訪問看護ステーションを開設するためには、設備資金と運営資金の確保が欠かせません。
設備資金は、開業時の家賃や敷金、保証金、自動車や自転車などの車両、そして、 事務機器などの備品を購入するために必要な資金になります。
一方、運転資金は、主に給与をはじめ、社会保険や福利厚生費などの人件費、および家賃など使われます。
なお、訪問看護ステーションを開業しても、最初の収入を得るのは3カ月以降です。 そのため、開業時には、3~5カ月分の人件費や家賃を支払えるよう資金を確保しておくことが必須となります。
したがって、自己資金だけで必要額を準備できない場合、低金利融資制度や雇用対策の資金の活用を検討することも重要です。
5.事業計画を立て事業を始める準備をする
訪問看護ステーションの指定申請には、事業計画書を提出する必要があります。 記載される内容は、経営方針や経営プラン、事業内容、資金計画、サービス計画などの1年ごとの単年度計画、並びに3~5年の中長期経営計画などです。
この事業計画書は、自治体に申請するだけでなく、開業資金の調達時に融資を受ける際にも提出を求められます。 そのため、自治体や金融機関の担当者に理解してもらえる説得力のある内容にすることも必要です。
たとえば、売上高の見込みと人件費などのバランスがとれているか、 利用者を紹介してもらうためどの医療機関やケアマネージャーに営業するかなども重要になります。
そして、収支計画を立てる際は、利用者が右肩上がりに増えていくだけでなく、 さまざまな理由により介護サービスが不要になり利用者が減ることも想定しておくべきでしょう。
6.事業運営に必要な書類を準備する
訪問看護ステーション開設には、事業計画書だけでなく、さまざまな書類が必要です。 そして、それらは、「訪問看護サービスの提供や事業運営に必要な書類」と「事業運営に必要な規程」で分けて考える必要があります。
たとえば、サービスに関する管理記録や自治体との連絡調整に関する記録、利用者との契約に関する書類などは、 訪問看護の提供や事業運営に必要な書類です。
そのほかにも、指定訪問看護に関する書類、会計経理に関する記録、設備備品に関する記録などがあり、 事業運営に必要な書類は多岐に渡ります。
また、事務所のパンフレットやサービス提供に必要なマニュアルも事業運営に必要なものとして用意しておきたい書類です。
一方、組織諸規程や人事諸規程、業務諸規程などは、事業運営に必要な規程として用意すべきものになります。 このように、用意すべき書類はとても多く、どの書類も重要なもののため、 管理担当者や記録方法、管理方法などを最初から決めておいたほうがよいでしょう。
7.賠償責任保険に加入する
訪問看護を提供する際、利用者や利用者の家族などに損害を与えた場合、 訪問看護事業者には損害への賠償責任が発生します。
訪問看護の現場では、ベッドから車椅子への移乗時の転倒や食事介助中に激しくむせ込ませてしまうなど、 いくら気を付けていても事故を完全に防ぐことはできません。
そういった不測の事態に、法律上の賠償責任で足りない部分を補償するため、 賠償責任保険への加入が義務付けられています。
また、業務中に怪我をさせてしまった場合以外に、 利用者宅で機材を移動させる際に壊してしまったなどの事態もゼロではありません。
そのような物損も賠償責任保険の対象になるため、 どのような事例に適用されるかをしっかりと把握しておくことも必要です。
8.必要な届け出をする
訪問看護事業者としての指定には、介護保険法に基づく指定と健康保険法に基づく指定があります。 そして、介護保険法の指定を受けるために行うのが、都道府県知事や指定都市・中核市市長への申請です。
この申請により、居宅介護サービス事業者および介護予防サービス事業者としての指定を受けることができます。
そして、介護保険法の指定を受けると健康保険法に基づく指定もみなし規定で受けられるため、 あらためて地方厚生局長に健康保険法に基づく指定を受ける必要はありません。
ただし、介護報酬の加算を受けるためには都道府県への届け出が、また、健康保険法に基づく加算を受けるためには、 地方厚生局長への届け出が必要になります。
そのほか、不正防止や利用者の保護、訪問看護事業の適正化のために整備が義務付けられた業務管理体制についての届け出も国や都道府県に対して行わなくてはなりなせん。 さらに、業務管理体制の届け出は、事業所数などに変更があれば、あらためて届け出ることが必要になります。
訪問看護ステーションの開業で注意が必要なこと
訪問看護ステーション開業には、これまで述べたもの以外にも注意が必要なことがあります。
その一つが、看護師を確保できるかどうかです。 訪問看護ステーションの数が多く、ただでさえ看護師不足が叫ばれるなか、 看護師の取り合いに発展する可能性は否めません。
より良い条件で看護師を確保しようとすると、人件費が経営を圧迫する可能性もあるため、 資金繰りを工夫することも重要になります。
そのためには、開業後の最低3カ月分の運転資金の確保も重要です。 訪問看護事業の収入が得られるのは、開業後3か月以降になります。 その間、無収入の間も人件費や家賃などの経費が必要になるため、十分な運転資金の準備は不可欠です。
そのほか、24時間対応が可能かどうかも訪問看護ステーション開業時にしっかりと検討すべきことだといえます。 というのも、介護保険法は改正が多く、場合によっては報酬が減額されるケースも少なくはありません。
また、介護サービスに24時間体制を求める声が多いことから、 24時間体制を導入する訪問看護ステーションも増えているのです。
このように、利用者のニーズにこたえるためにも、また、報酬確保のためにも24時間体制への対応は必要だといえます。
理想とする訪問看護ステーションの開業を目指そう
訪問看護ステーションは、さほど広い事務所を用意する必要はなく、比較的少ない金額で開業できます。
また、在宅での看護を希望するさまざまな人たちから求められるやりがいのある仕事です。
加えて、地域社会の役に立つ事業でもあるため、訪問看護に携わりたいと考えているなら、 自身が理想とする訪問看護ステーションを開業してみてはいかがでしょうか。
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