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訪問看護指示書とはどういう書類?種類と書類の見方を理解しよう

 看護師が訪問看護を行う際、必要不可欠となるのが医師から交付される「訪問看護指示書」です。 ただ、訪問看護指示書という書類の存在は知っていても、具体的にどんなことが書いてある書類なのかよくわからないという人もいるでしょう。

 今回は、訪問看護指示書にどのような種類があるのか、どのような内容のものなのかを解説していきます。



 

訪問看護指示書とは何のための書類?

 訪問看護指示書とは、その名の通り訪問看護に関する医師の指示が記載された書類であり、訪問看護を行ううえで必要不可欠なものです。

 訪問看護ステーションの看護師から医師に対して訪問看護指示書の交付が依頼され、医師は患者の状態や希望などをふまえて訪問看護が必要かどうかを判断します。 訪問看護が適切であると医師が認めた場合のみ、訪問看護指示書が実際に交付されます。

 仮に患者が訪問看護を希望したとしても、 訪問看護指示書の交付がなければ医師がその必要性を認めていないことになり、訪問看護は行われません。

 とはいえ、訪問看護の対象となる患者の制限は厳しいものではなく、必ずしも通院困難な状態でなくても利用できるケースがあります。 一時的な症状の悪化ではなく継続的な療養が必要という条件はあるものの、たとえば通院中の高齢者宅へ内服管理に行くことも訪問看護の一環として認められます。

 ほかにも日常生活の看護やリハビリ、治療促進や症状緩和など幅広い看護内容があるため、 それぞれの患者の状態や症状に合わせた適切な訪問看護指示書が必要です。

 どのような看護が必要かによって訪問看護指示書の内容や種類が変化するため、訪問看護を続ける中で患者の状態に変化が表れた際は、 医師に報告したうえで新たな訪問看護指示書を交付してもらうことになります。

 訪問看護指示書の内容により訪問できる回数も異なるため、患者の症状と照らし合わせて適切な訪問回数となる種類にしなくてはなりません。

 

訪問看護指示書の種類とは?

 ひと口に訪問看護指示書といっても、実際には患者の状態や症状ごとに4つの種類に分けられています。 患者に最適な看護を行うためには、看護師自身もどのような種類があるのかを正しく知っておかなくてはなりません。

 次は、訪問看護指示書の具体的な種類について見ていきましょう。

 

1.訪問看護指示書

 広く用いられる一般的な種類としては、スタンダードな「訪問看護指示書」が挙げられます。

 医療保険と介護保険の両方に対応するものであり、訪問看護ステーションの依頼によって医師が交付します。 このとき渡されるのは訪問看護指示書の原本でなくてはならず、仮にコピーが交付されても訪問看護を指示する正式な書類としては認められません。

 訪問看護指示書には患者の個人情報のほか症状投与中の薬剤日常生活自立度使用中の医療機器リハビリの有無や医師からの指示などさまざまな情報が記載されています。

 どのような内容を記載するかは各訪問看護ステーションによって異なりますが、 患者に適切なケアを行うために必要とされる情報が幅広く記載されることが多いです。

 患者の状態に合わせて看護の内容を変えるためにも、訪問看護指示書の指示期間は最長でも6カ月までと定められています。 特に指示期間の記載がない場合は6カ月ではなく1カ月となるので、こまめに訪問看護指示書を交付してもらわなくてはなりません。

 患者が2カ所以上の訪問看護ステーションからサービスを受ける場合、医師は各訪問看護ステーションへ訪問看護指示書を交付する必要があります。 1枚だけ交付されたものを、訪問看護ステーション間で使い回すことはできないので注意しましょう。

 また、訪問看護指示書を交付する際に算定できる点数は月に1回のみです。 2カ所以上の訪問看護ステーションに書類を交付したとしても、医師が算定できる点数が増えることはありません。

 

2.特別訪問看護指示書

 訪問看護指示書に次いでよく利用されるのが、「特別訪問看護指示書」です。

 患者の容体が急激に悪化した場合や退院直後など、頻回の訪問看護が必要だと医師が判断した場合に交付する特別な指示書になります。 基本的には訪問看護指示書が交付されている患者を対象としており、最初から特別訪問看護指示書のみが単独で交付されることはありません。

 特別訪問看護指示期間中の訪問看護は医療保険対応となり、それまで介護保険で訪問看護を利用していた患者に交付した場合は医療保険に切り替わります。

 特別訪問看護指示書を交付すると、医師は原則として月1回100点を算定できます。 ただし、患者が気管カニューレを使用している場合や褥瘡が真皮を越えている場合であれば、月2回までの交付が可能です。

 指示期間は特別訪問看護を指示された日から最長で14日間であり、月をまたいでも問題ありません。

 特別訪問看護指示書の指示期間内に患者の容体が改善した場合は、指示期間を訂正するケースもあります。 訂正後の訪問看護は通常の訪問看護指示書にもとづいて行われるため、医療保険から介護保険対応へと戻ることになります。

 特別訪問看護指示書は通常の訪問看護指示書に加えて交付されるものであるため、記載内容はシンプルなものが多いです。

 訪問看護ステーションごとに様式は異なりますが、一般的には患者の氏名や生年月日のほか、 訪問看護が一時的に頻回になる理由や留意事項、投与薬剤に関する項目などが主に記載されます。

 

3.在宅患者訪問点滴注射指示書

 在宅患者訪問点滴注射指示書は、患者に対して週に3日以上の点滴注射が必要だと医師が判断した場合、 訪問看護ステーションが点滴注射に対応できるように交付される書類です。

 書類の様式は、通常の訪問看護指示書や特別訪問看護指示書と変わりません。

 1カ月の交付回数に制限はありませんが、原則1週間に1回の交付となり、1回の指示期間は7日以内となっています。 週3日以上にわたって点滴を行った場合、医師は60点の在宅患者訪問点滴注射管理料を算定できます。

 ただし、在宅患者訪問点滴注射指示書で対応できるのは抹消静脈に限られ、 心臓近くにカテーテルを通すリスクの高い「中心静脈栄養」を行うことはできません。

 中心静脈栄養は療養中の患者が栄養を効率良く摂取するための処置であり、 訪問看護で行われるほかの治療薬の点滴とは目的が異なるというのも大きな理由のひとつです。

 

4.精神科訪問看護指示書

 精神科訪問看護指示書は、精神疾患を有する入院中以外の患者を対象として、 適切な在宅医療の確保が必要だと医師が判断した場合、訪問看護を指示するために交付される書類です。

 訪問看護ステーションが、精神科訪問看護基本療養費やその加算を算定する場合に、主治医へ交付を依頼します。

 ほかの訪問看護指示書ではあくまでも患者本人が対象となっていますが、 精神科訪問看護指示書に関しては患者だけでなくその家族までが訪問看護の対象となっている点が特徴です。

 また、精神科訪問看護指示書は、精神科を擁する医療機関の精神科医が交付しなくてはなりません。 専門医の診療にもとづいて訪問看護の必要性を判断する必要があるため、基本的に精神科医以外が交付することはできないのです。

 精神障害を有する患者の自宅を訪問し、訪問看護基本療養費やその加算を算定する場合は、通常の訪問看護指示書の交付も必要となります。

 なお、認知症患者も精神科訪問看護指示書の対象であると誤解されやすいですが、 認知症は精神疾患とは別の疾患であると見なされるため、ほかの種類の訪問看護指示書を交付してもらわなくてはなりません。

 

看護師にとって注意が必要なポイントとは?

 訪問看護指示書は、訪問看護ステーションの依頼によって医師が作成し、交付するものです。

 看護師は受け取るだけというイメージがありますが、もちろんそれだけではいけません。 交付された指示書の内容をすみずみまで確認し、慎重に取り扱う必要があります。

 次は、訪問看護指示書の取り扱いにおいて、看護師が注意しなければならないポイントについて見ていきましょう。

 

1.訪問看護で使用できる薬剤

 患者によっては、治療のために訪問看護で薬剤の投与が必要になるケースもあります。

 訪問看護では基本的に医師が同行しないため、看護師が薬剤の投与を行わなくてはなりません。 しかも、医師が同行しないことで利用できる薬剤に制限もあります。

 医師がすぐ近くにいる入院中であれば、病院にあるすべての薬剤がスムーズに使用できますが、患者の自宅ではそうもいかないのです。 このため、訪問看護で使用できる薬剤について、事前に確認するなどして十分に注意しておきましょう。

 医師が訪問看護指示書を作成する際、訪問看護で使用できる薬剤の制限に気付かないまま指示を出すこともあります。 訪問看護ステーションや看護師もそれに気付かず、指示されるままに薬剤を使用するとどうなるでしょう。

 本来訪問看護では認められない薬剤を使用しても、薬剤請求できなくなってしまうのです。 たとえ、実際に患者に投与されていたとしても、制限されたものである以上は請求が認められなくなるので注意が必要です。

 また、訪問看護で使用できる薬剤だったとしても、看護師が独断で使用することは認められません。 実際に患者の様子を見て、「この点滴が必要だ」と看護師が感じる場合もあるでしょう。

 しかし、訪問看護はあくまでも医師の指示に従って行われるものです。 薬剤や点滴、注射などの必要性を感じたとしても勝手には投与せず、必ず医師への報告と相談を行うようにしましょう。

 

2.週3回以上の点滴注射

 通常の訪問看護指示書では、必要に応じて看護師による注射や点滴が認められています。 ただし、週3回以上の注射や点滴を行う場合は、通常の訪問看護指示書だけでなく在宅患者訪問点滴注射指示書の交付も必要です

 このように頻回の注射や点滴が必要とされるということは、患者の容体が悪化しているか、 退院直後など慎重に容体を確認しなければならない状況であると想定されるためです。

 頻回の注射や点滴が妥当な処置であることを示すためにも、 在宅患者訪問点滴注射指示書だけでなく特別訪問看護指示書が交付されるケースも少なくありません。

 どちらの指示書も通常の訪問看護指示書にプラスして交付されるものなので、すべての書類がそろっているか忘れずに確認しましょう。

 また、注射や点滴を行う際に必要となる医療材料や衛生材料は、基本的に医療機関側が準備して訪問看護ステーションへと渡します。 訪問看護ステーションと医療機関担当者との事前協議をしっかりと行い、材料が届いたら足りないものがないか詳しくチェックすることも大切です。

 

訪問看護指示書に基づく訪問看護計画書の作成

 医師から訪問看護指示書を受け取りさえすれば、すぐに患者のもとへ行って看護できるわけではありません。 もちろん、訪問看護指示書は患者に対する診断をもとに医師が作成したものであるため、その内容にしたがって看護することが前提です。

 ただし、訪問看護指示書はあくまでも全体的な指針を示したものに過ぎず、 患者やその家族の希望などが反映されていないケースも珍しくありません。 これでは、患者にとって最適な在宅医療が受けられない可能性もあります。

 指示書に記載された内容にもとづき、患者や家族の意向もふまえ、 課題を解決できるような具体的な方法を提案する「訪問看護計画書」の作成が必要となるのです。

 患者のためになる具体的な計画を立てるうえで医師の指示が不足している場合は、勝手に判断せずまず医師に相談しましょう。 看護の必要性を医師に判断してもらったうえで、追加の指示を出してもらうのが一般的な流れです。

 訪問看護計画書が完成したら患者へ説明し、了承を得られたら実際に看護を行うことになります。

 

訪問看護計画書と訪問看護報告書の提出

 訪問看護指示書にしたがって訪問看護計画を立て、実際に訪問看護を行ったら、最後に「訪問看護報告書」を作成しなくてはなりません。

 訪問看護計画書と訪問看護報告書は最終的に医師に提出することになるので、丁寧に作成しましょう。 ただし、訪問看護に行くたびに医師に提出するわけではなく、当月の訪問看護報告書と翌月の訪問看護計画書をまとめて提出するケースが多いです。

 このように書類を共有することで、医師は訪問看護指示書にもとづいた看護が実際に行われたかを確認したり、 患者の症状の変化に応じて臨機応変に指示を出したりできます。

 また、訪問看護には医師や看護師のほかに、理学療法士などの担当者が関わることも珍しくありません。

 さまざまな部署の担当者が密に連携を取って患者をケアしていくためにも、訪問看護指示書や訪問看護計画書、 訪問看護報告書のやりとりは欠かせないものです。 書類を作成する際はこのことを理解し、丁寧かつ的確な内容になるよう注意しましょう。

 

訪問看護指示書に従うことが訪問看護の基本

 設備や薬剤、人材がそろっている病院とは違い、患者の自宅で行う訪問看護ではできることが限られています。 その中で最大限のケアを行うためには、医師が作成する訪問看護指示書にしたがうことが基本です。

 そのうえで最適な訪問看護計画書を作成し、住み慣れた自宅で患者が心穏やかに過ごせるようにサポートしていきましょう。

 

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