訪問看護には2つの保険が使える!介護保険がカバーする範囲とは?
訪問介護の現場では、介護保険が使われている場合と医療保険が適用になっている場合との2パターンがあるのはよく知られている通りです。 しかし、どのようなケースで介護保険が使われるのかをはっきりと把握している人は、案外少ないのではないでしょうか。
そこでこちらでは、介護保険が適用されるのはどのような場合なのかを分かりやすく解説します。
目次
訪問看護で利用できる2つの保険
訪問看護では、介護保険が使われる場合と、医療保険が使われる場合とがあります。 どのような状況下で、保険の適用が変わってくるのかということについて説明します。
1.介護保険が使える条件
そもそも訪問看護は、利用者の主治医がその必要性を認めてくれていることが大前提となります。 その上で、主治医から訪問介護指示書を交付してもらい、やっとおこなうことができるようになるのです。
一般的には、訪問看護を利用するときに介護保険が使える場合の条件は2つ挙げられています。
そのうちの片方は、利用者が65歳以上であって、要介護、あるいは、要支援の認定を受けていることです。
もう一つは、利用者の年齢が40歳以上65歳未満で、要介護か要支援の認定を受けており、 さらに、2号被保険者でありながら介護保険を申請できる病気、つまりは16特定疾病にかかっている人です。
基本的には、訪問看護を利用したい人が要介護か要支援の認定を受けているならば、 訪問看護の利用形態は介護保険ということになるでしょう。
2.医療保険が使える条件
訪問看護を利用するときに医療保険を使うことになる場合であっても、 やはり主治医から交付された訪問看護指示書が必須になります。 訪問看護は、訪問看護指示書に基づいておこなわれるものだからです。
訪問看護に医療保険が適用になるには、いくつかのケースが考えられます。 年齢を軸にしてみると、40歳未満の人は、基本的に医療保険で訪問看護をうけることになります。 また、利用者が40歳以上であっても、要介護、もしくは要支援の認定を受けていない人の場合は医療保険が適用です。
通常、要介護や要支援の認定を受けている利用者には、医療保険ではなくて介護保険を使って訪問看護をおこないますが、 例外も存在していることも覚えておきましょう。
特に重い病気にかかっている場合などがこれに当てはまります。 利用者が厚生労働大臣によって認定されている疾病に罹患していたり、 厚生労働大臣が認定している指導管理を受けていたりする場合は、たとえ要介護、もしくは、 要支援の対象者になっていたとしても、医療保険を利用できることがあるのです。
さらに、精神疾患を患っている人が訪問看護を受ける場合にも、医療保険が使われます。 ただし、精神疾患とはいえ、かかっている病気が認知症の場合は条件から除外されます。
利用者が認知症患者であるケースで訪問看護が必要になっても、 ほかの条件が加わらなくては医療保険が使われることにはなりません。
介護保険対象の訪問看護と訪問介護の違いは?
訪問介護は介護保険を利用しておこなわれるサービスです。 訪問看護も、条件によっては介護保険で利用されます。 そのため、訪問看護と訪問介護が混同されてしまうことは、ありがちなケースでもあるようです。
しかし、当然のことながら両者には違いがあります。 訪問看護を利用するにあたっては、まず、利用者の主治医から訪問看護指示書を交付してもらわなければなりません。 主治医が訪問看護の必要性を認めて判断を下してくれない限りは、訪問看護をすることができないのです。
一方、訪問介護には訪問看護指示書は必要ありません。
訪問看護には医師の指示が不可欠となるため、一見すると対象者の制限が厳しいかのような印象も受けます。 しかし、実際にはそのようなことではなく、訪問看護と訪問介護では利用条件が異なっているだけなのです。
訪問介護のほうは主治医からの指示書はいりませんが、 利用できるのは要介護1~5の認定を受けた人だけに限定されてしまっています。
訪問看護ではその限りではなく、主治医が必要であると判断しさえすれば、 要支援1~2の人でも利用することができるのです。要介護1~5の認定を受けている必要はありません。
また、訪問看護と訪問介護では、任務にあたるスタッフも違っています。 訪問看護をおこなう際には、看護師、准看護師、保健師などが利用者の住まいに向かいます。
リハビリが必要なケースなどでは、理学療法士、作業療法士、もしくは、言語聴覚士が仕事にあたる場合もあるでしょう。
訪問介護の場合は、介護福祉士や訪問介護員などがおこなっています。 つまり、訪問看護と訪問介護とでは、それぞれの仕事をするスタッフが所有している資格が違っているということになります。
医療保険と介護保険は併用できない
基本ルールとしては、医療保険と介護保険を合わせて一緒に使うことはできないことになっています。 医療保険と介護保険とでは、適用できる人、保険がカバーする対象、そして、自己負担分の割合なども違っているからです。
介護保険を利用するためには、要介護認定を受ける必要がありますし、 そもそも、介護保険は介護保険サービスに対して使われる保険です。
ところが医療保険のほうはケガや病気の治療などに使われるものなので、もともと要件が違っています。 自己負担の割合や限度額もしかりです。
介護保険では利用者が負担しなければならないのは、サービス利用料の一割というのが原則となっています。 残りの9割は、介護保険でカバーしてくれるのです。 ただし、介護保険には限度額が設定されています。
医療保険は高齢者は1~2割の負担で、現役世代は3割の自己負担というのが原則です。 しかし、医療保険には限度額は設けられていません。このような違いから、医療保険と介護保険を同時には利用しないのです。
ただし、例外として併用が可能となるケースも存在します。 すでに介護保険を使ってリハビリを受けている人が、別の病気やケガが原因で医療保険のリハビリを受ける場合などです。
たとえば、脳梗塞で介護保険の適用を受けてリハビリをしている人が、あらたに骨折したとしましょう。 この場合、骨折のために必要なリハビリは医療保険でうけることになるので、介護保険と医療保険の併用が可能です。
もし同じ病名であった場合でも、併用できるケースがあります。 回復期に医療保険でリハビリを受けていた人でも、維持期に入ってからは介護保険でリハビリをはじめることになります。 回復期から維持期のリハビリに移行する期間に、それぞれのリハビリを違う施設で受けていた場合には併用が可能になるのです。
医療保険のリハビリと、介護保険を使って訪問看護によって医学療法士などがおこなうリハビリを同時期に受ける場合も、 それぞれの病気が違っていれば医療保険と介護保険を併用できます。 その際には、医師がその旨をはっきりと指示していなければなりません。
また、入院していた人が退院したあとの一カ月間のみの限定になりますが、 疾患別リハビリテーション料を算定できるならば、どんな疾患であってもリハビリのための医療保険と介護保険の併用が可能です。
対応する保険が決まっている疾病や処置
疾病や処置によっては、保険の利用形態が決まっているものがあります。 こちらの段落では、それに当てはまる病名などの説明をしていきます。
1.65歳未満で介護保険の対象となる16特定疾病
65歳未満の第2号被保険者でも16の特定疾病にかかってしまい、その病気が原因で日常生活を送ることが難しくなり、 その状態が3~6カ月以上継続することが予想されるケースでは、介護保険を利用することができます。
要介護の認定を容易にすることを目的として、16の疾病名が個別に挙げられています。
- 1.がん
- 2.関節リウマチ
- 3.筋萎縮性側索硬化症
- 4.後縦靱帯骨化症
- 5.骨折を伴う骨粗鬆症
- 6.初老期における認知症
- 7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患を含む)
- 8.脊髄小脳変性症
- 9.脊柱管狭窄症
- 10.早老症
- 11.多系統萎縮症
- 12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 13.脳血管疾患
- 14.閉塞性動脈硬化症
- 15.慢性閉塞性肺疾患
- 16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
以上の16の疾病ですが、これらの中のいくつかの病気には、さらなる条件が加えられて限定されているものがあります。
がんは、細胞診や組織診でがんであることが証明されていて、 画像診断などで臨床的に回復する見込みがないと判断されたケースに限られています。
また、その病名によっては、自力での歩行が困難になるなどの条件もあるので確認が必要です。
2.介護保険利用者でも訪問看護が医療保険の対象になる疾病
介護保険を利用している人でも、訪問看護を医療保険で受けることになる疾病や症例があります。
その一つが、末期のがんを患っている人に対する訪問看護です。 国が難病と指定している病気にかかっている利用者への訪問看護も、末期がん同様に医療保険の対象になります。
介護保険の対象になる疾病とされているパーキンソン関連疾患も、定められている条件に当てはまれば医療保険の対象です。 パーキンソン病関連疾患は、病気の進行度、および、重症度をホーエン・ヤールの重症度分類と生活機能障害度を用いて数値で示しています。
この、ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上で、生活機能障害度が2度または3度になると、 介護保険ではなく医療保険の対象になります。
また、人工呼吸器を付けている症状にある場合も、医療保険の対象です。 そのほかにも、気管カニューレや留置カテーテルを使用しているケース、ストーマ(人工肛門や人工膀胱)を設置しているケース、 そして、真皮を超えるほどの床ずれができているケースでも、同じく医療保険の対象です。
在宅酸素療法管理指導や在宅自己疼痛管理指導管理をはじめとする、在宅療養の各種指導管理を受けている場合も、 医療保険が使われます。
要介護認定者が特別訪問看護指示書の交付を受けた場合は?
頻繁に訪問看護が必要だと判断された場合には、医師から特別訪問看護指示書の交付を受けることができます。
指示の有効期限は14日間で、その間は医療保険を使って訪問看護を受けることになります。 特別訪問看護指示書があると基本的な制限に縛られることがなくなり、週4日以上、1日複数回の訪問看護を受けることも可能です。
その上、2カ所以上の訪問看護ステーションから看護師を派遣してもらったり、 一度に複数の看護師に対応してもらったりすることもできるようになるのです。
特別訪問看護指示書が交付されるのは、退院直後、心不全や肺炎の急性増悪、 病名には関わらず終末期にあるときなどに限定されます。
頻繁におこなわれる訪問介護は、数カ月続くような恒常的なものではなくて臨時的な措置で、月1回発行してもらえます。 ただし、気管切開や真皮を超える褥瘡がある場合には、2回の交付が可能です。
なお、特別訪問看護指示書で訪問看護を利用している期間は、介護保険はストップします。
訪問介護でできて訪問看護ではできないこととは?
介護保険を利用して、自宅で受けられるケアの内容を比較してみた場合、 訪問介護では可能なのに訪問看護ではできないことはあるのでしょうか。
訪問看護と訪問介護では、提供するサービスの範囲が違っています。 訪問看護をおこなうには、例外なく医師が交付する訪問看護指示書が必要です。 つまり、訪問看護の目的は、医師の指示に基づいた看護ケアでなければいけません。
具体的には、医師の指示でおこなう注射や採血や血圧測定、カテーテルをはじめとする医療機器の管理、 導尿や褥瘡の手当てなどの医療行為になります。また、有資格者によるリハビリも、訪問看護で可能な医療行為です。
ただ、訪問介護のスタッフができるサービス内容にも、訪問看護でおこなうことができるものもあります。 清拭、入浴や食事の介助、体位変換などがそうです。
しかし、医師の指示に基づいていないことをおこなうことはできないため、掃除や洗濯や調理はできません。 もちろん買い物などの家事の手伝いも、訪問看護では対応不可になっています。
複数の訪問看護ステーションからの保険請求は要注意
1人の利用者に対して複数の訪問看護ステーションが関わっている場合、保険請求には注意が必要となります。 週に1回、もしくは、月に1回というように、算定の回数が限定されている点数があるからです。
そのようなケースでは、複数の訪問看護ステーションが訪問していたとしても、一カ所でしか算定できないことになります。 その週によって、加算を算定する訪問看護ステーションが変わることになったとしても問題はありません。
訪問看護ステーション同士で相談し合い、算定の方法を上手く調整することが重要になるでしょう。
介護保険で対応できる訪問看護は限られている
訪問看護の現場では、介護保険を使って対応できる利用者は限られています。
介護保険のサービスを受けているケースでも、指定されている疾病にかかったり、特定の処置が必要だったりする場合には、 利用形態が医療保険に切り替わることを念頭に置いておくようにします。
その上で、適切な訪問看護プランを立てることができるようにしましょう。
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